资源描述
『最終回拡大90分SP
さようなら、朝倉総理涙のラストメッセージ22分間の全国生中継』
ついに倒れてしまった朝倉啓太内閣総理大臣(木村拓哉)。
それも、キャベツ農家の復旧を国が支援することも決まり
“チーム朝倉”としてさらにさまざまなことに取り組み、
国民のために働こうとしていた矢先。
啓太が予算委員会中に神林正一(寺尾聡)の質問に答えている最中だった。
記者会見場
「総理の病状ですが、急性発作頭位目眩症。
これは極度の過労とストレスが原因で起こる症状で、
耳石に異常が生じ、急に目眩が起こるというものです。
恐らく総理は、倒れられた時に頭を打ち、
一時的に意識不明になったと思われます。」
月丘瑠美子(堀内敬子)が説明する。
「総理はどんな様子なんでしょうか。」
「・・・今は、」
秘書官室
「ずっと、眠っておられるんですか?総理は・・」と郡司(郡司敏夫)。
「今はとにかく、安静にしているのが第一だそうなので。」と理香(深津絵里)。
「で・・いつ頃、復帰出来そうなんだ?」と百坂(西村雅彦)。
「それはまだ・・。
とにかく、この3日間のスケジュールは全てキャンセルして下さい。」と理香。
「はい。」
朝倉邸
「とりあえず総理の着替えは入れておきました。」
ひかる(加藤ローサ)がスーツケースを運ぶ。
「ありがとう。
それを病院に届けて、総理のお母様をここにお連れして。」と理香。
「はい。」
「美山。」と韮沢(阿部 寛)。
「明日の官房長官記者会見で話していただくことは
今メモを渡しますから。」
「あいつは何を喋ろうとしたんだ。」
「・・・」
テレビでは昨日の予算委員会の影像が流れている。
「僕は・・
僕は総理を辞任します。
そう言おうとしたんじゃないのか?あいつは。」と韮沢。
「何言ってるんですか!
何で総理が辞めなきゃいけないのよ!」とひかる。
「そうなの。」と理香。
「え・・」
「総理は・・辞任を表明しようとしていたんです。
大堂商事疑惑の、責任を取って・・。」
「嘘・・。」
公園で話す韮沢と理香。
「俺は遠まわしの言い方は嫌いだ。
お前いいのか?あのままあいつを辞めさせて。」
「・・・
瑠美子先生から言われてたの。
総理に無理をさせちゃいけないって。
もっと深刻な、命に関わるようなことになっても
おかしくなかったのよ。
これ以上・・・頑張れなんて私には言えない。」
「それは秘書官として言ってんのか?
それとも・・」
「・・・」
「・・・そうか。」
病院
ベッドで眠る啓太を見つめる理香。
啓太の手を優しく握り締め・・。
その時、啓太が伸びをする。
「総理・・総理!」
「美山さん・・。」
理香は嬉しそうに微笑むと、慌てて啓太の手を離し、
ナースコールを押す。
「病院です。
総理はお倒れになって、ここに運ばれたんです。
予算委員会で、質疑応答の最中に・・。」
「え・・うん?」
「ご気分はどうですか?頭痛くないですか?
目眩は?」
「・・・腹減った・・。」
「は!?」
ベッドの上で食事を取る啓太。
「お代わりお願いします。」
「お代わりって・・。」と母・貴江(富司純子)。
「食べすぎです、総理。」と理香。
「いいんですか?」SP・檀原が瑠美子先生に聞く。
「これだけ食欲があるんなら。」と瑠美子先生。
「あれ僕に来たお見舞いですか?」
フルーツバスケットに気づいた啓太が聞く。
「生方先生からです。」と理香。
「食べます!」
記者会見場
「朝倉総理は目を覚まされまして、病院食を2人前、
バナナ3本、メロン1玉、イチゴ1パックをお召し上がりになりました。
体は、回復に向かっております。」
韮沢が報告する。
病院
「総理臨時代理?」と啓太。
「内閣法9条に、総理に事故のある時、または欠けた時は、
あらかじめ指定する閣僚が、臨時に総理の職務を行うという
規定がありまして、初閣議で、代理を務める順位が、
1位から5位まで決められています。」と理香。
「はあ・・。」
「朝倉内閣の1位は、神林官房長官でしたが辞任されたので、
2位の、小松崎総務大臣が、代理を務めることに。」
「小松崎先生が・・。」
「はい。
小松崎大臣以下、5位までの方々全員が、
大堂商事疑惑で、名前を挙げられている閣僚たちです。
誰が代理になっても、国民は納得しません。」
「・・・じゃあ韮沢さん!」
「とても愉快なキャスティングですが、
残念ながら、代理は国会議員に限られています。」
「そうなんだ・・。
・・・あ、じゃあ、」
執務室
「僕が総理の代理なんて・・まだ信じられない。」と生方(石黒 賢)。
「朝倉総理が、生方先生を指名されたんです。」と理香。
「よろしくお願いします、総理代理。」と百坂。
「はい。頑張ります!」
病院
新聞を読む啓太。
『早期退陣』『次期首相に神林氏有力か』
誰かが病室の戸をノックする。
「あなたの総理就任は、言ったとおり、憲政史上歴史的な出来事に
なりましたね。」と神林。
「・・・」
「総理。あなた、辞任なさるおつもりですか?」
「・・・」
「もったいない。
もし、私が次の政権を担うとしたら、是非あなたに入閣して
いただきたい。
いかがですか?」
「・・・ありがとうございます。
でもそれは、お断りさせて下さい。」
「なぜ?」
「それでは責任を取ったことになりません。」
「責任・・。あなたらしい。
どうぞ、お大事に。」
神林が帰っていく。
執務室
「総理代理、署名をいただけますか?」と秋山(鈴木浩介)。
「署名・・」
「あと、これが、訓練学校の設備一覧です。」と百坂。
「総理代理、昨日の、地球温暖化対策会議の議事録です。」と西(矢島健一)。
「えー・・じゃあ、それは、ここに。」
生方はそう言い、書類に署名しようとする。
「あの・・お読みにならないんですか?それを。」と秋山。
「・・朝倉総理は、これ全部読んでたんですか?」と生方。
「はい。」と百坂。
「本当に!?
・・寝る時間削っても、無理ですよ。」と生方。
「あの・・寝てらっしゃいませんでした。」と西。
「朝倉総理は、ご自宅でもお仕事を。」と秋山。
「毎晩!?」
秘書官たちが頷く。
「あの・・差し出がましいようですがもし宜しければ、
すぐにでも、職業訓練学校に、視察に出かけられては
いかがでしょうか。
資料は行きの車中でお読みいただくとして。」と百坂。
「・・朝倉総理なら、」と生方。
「そうされているかと。」と百坂。
秋山、西が頷く。
「なるほど。」
生方は笑顔を浮かべ、立ち上がる。
朝倉邸
「ご馳走様でした。」と啓太。
「本当にもう、大丈夫そうやね。」と貴江。
「うん。」と啓太。
「じゃあ何か、果物切ります!」と理香。
「いいとよ、美山さん。」
「大丈夫です!任せて下さい。」
「すみません!」両手を合わせて謝る啓太。
理香と貴江が台所に行く。
「・・・・
トランプやるか?」と韮沢。
「え!?」
「賛成!」とひかる。
「何で持ってんの!?」
「お前の退院祝い。」と韮沢。
「ポーカーやりましょう!」とひかる。
「それはないだろ。」と韮沢。
「セブンブリッジは?」とひかる。
「なにそれ。」と韮沢。
「僕ちょっとニュース見たいんで。」と啓太。
「いいから!見なくていいから!」と韮沢。
「じゃー神経衰弱!」とひかる。
「病み上がりなんで神経衰弱は・・。」と啓太。
「関係ねーぞ。」と韮沢。
「神経が衰弱するんですよ!?」と啓太。
「・・じゃあ何やる?」と韮沢。
「・・ババ抜きとか。」
「おー!」
台所
三人の会話に微笑む理香。
「啓太・・・辞めるつもりなんやね。」と貴江。
「・・・」
「仕方なかよ。政治家が進退を決めるとは、
自分自身なんやけ。」
「お母様・・」
「啓太のこと、みなさんにお任せします。」
「はい。」
理香は朝倉家を出ると、檀原に「よろしくお願いします。」と声をかける。
「あの、美山さん・・」
「はい。」
「本当に・・お辞めになるんでしょうか、総理・・。」
「それは、私達が考えることじゃありません。」
「私は・・・朝倉総理が好きです。」
「私もです。」
理香が帰っていく。
マスコミが神林にマイクを向ける。
「内閣不信任決議案が提出されそうですが。」
「そういう流れになるのは、まあ当然と言っていいのかも
しれませんね。」と神林。
「朝倉内閣は、総辞職するべきと、お考えですか?」
「もう総理は、それを決意されてますよ。」
秘書官室
神林のインタビューを見ていた秘書官たちは驚きを隠せない。
「なんだこれ!」
「美山さん、本当ですか!?これ・・」
そのニュースは啓太も自宅で見ていた。
「総理は、自分が辞めるつもりだと。」と神林。
「それは総理ご自身から直接?」
「ええ、責任を取りたいと、そう仰っていました。」
「辞任のタイミングは?」
「次の総裁選びはどのように!?」
そこへ、長野の小学生たちが突然遊びにやって来る。
「お邪魔しまーす!」
「おー、ここが総理の家かー!」
「いい感じじゃん!」
「あ、これ、みんなで書いたから。」
女子生徒が色紙を渡す。
官邸
「このままでは神林が政権を取ってしまう!」と二瓶(神山 繁)。
「しかし、大堂商事疑惑の情報を週刊誌に売ったのが、
神林先生だという証拠はありません。」と垣内(大林丈史)。
「政友党の議員を売ったんだぞ!!」
「しかし、これ以上の詮索は危険です。
本当に神林総理が誕生したら、我々はまずい立場に・・。」
朝倉邸
子どもたちとトランプをして遊ぶひかる。
「ねーみんな、すごい人を紹介します。
SPの檀原さん。」と啓太。
「先ほどは、どうも。」と檀原。
「カッコイイ!」
「カッコイイだって!」と啓太。
「それ程でも・・。」
「ねーねー!SPって、本当に体張って、総理を守るの?」
「もちろんだよ!」
「でもモジャ倉だよ。」
「何だよそれ・・」と啓太。
「まあ確かに、最初は納得いかなかったね。
こんな頭の素人総理の警護は。」
「え・・」と子どもたち。
「でも今は、この人の為なら、自分の命を賭けてもいい!」
「カッコイイ!」
「本物のSPだー!」
檀原の横っ腹をつつく啓太。
「バーン!」子どもがふざけて銃を撃つ真似をする。
啓太の前に躍り出て啓太を守る檀原。
「おーーーーっ!」
「バキューン!」
「危ね!」横に飛びのく檀原。
「何で今避けたんですか?当たりましたよ。」と啓太。
「冗談です。冗談・・。
じゃ、もう一回!」
「バキュンバキュン!!」
「やめろ、やめろ・・」
神林の事務室
「総理が辞任を口にしていたとは・・驚きましたな。」と二瓶。
「それを神林先生に漏らしたということは、
後はよろしくお願いしますということでしょう。」と垣内。
「いよいよ神林先生の時代が来たか。」と二瓶。
「作りますか?チーム神林。」と垣内。
二人の話に笑みを浮かべる神林。
子どもたちとアイスクリームを食べる啓太。
「先生!
総理辞めちゃうの?」「辞めちゃうの!?」
「・・うん。」
「どうして!?」「どうして辞めるんだよ!」
「父さん言ってたぞ。モジャ倉はちゃんとやってるって。」
「悪いことしてたのはほかの人たちで、
先生は何もやってないんでしょう!?」
「辞めないでよ、先生!」
「そうだよ、辞めることないよ!」
「先生も悪いんだって。」と啓太。
「どうして!?」
「・・・うん。
あのね、総理大臣には、任免責任っていうのがあるの。
大臣を選んだのは総理だから、
あとになって、大臣が悪いことをしていたってことがわかったら、
選んだ総理にも責任があるの。」
「そんなの変だよ!」
「変じゃない。
それが政治の世界のルールだから。
それを知らん振りして総理を続けたら、
ルール違反でしょ?」
「・・・でも。」
「じゃあ何?
みんなは先生がズルいことした方が嬉しい?」
「嬉しくない・・。」
「あ、ほら、早く食べないと。
6時の電車まであと11分ですよ。」
執務室
「お帰りなさい。総理。」
生方が握手を求める。
「留守中、ありがとうございました。生方さん。」
「良かった!死ぬかと思いましたよ。」
「心配かけました。すみません。」
「いえ。僕がです。」
「は?」
「僕はもう、二度とごめんですよ。
正直驚きました。
ついこの間まで政治の素人だったあなたが、
あれほどの量の仕事と、ちゃんと向き合っていらっしゃるとは。
・・・本当にお辞めになるおつもりですか?」
「・・はい。」
「残念です・・。
実に残念だ・・。」
神林の事務室
「外務省の、桜木事務次官がいらっしゃいました。」と近藤(風間杜夫)。
「うん。」と神林。
「どうぞ。」
「外務省の桜木でございます。
お忙しいところ大変申し訳ございません。
是非、今のうちに、ご挨拶をと存じまして。」
「まだ私が総理になると決まったわけじゃありませんよ。」
「いえいえ、霞ヶ関ではもうそういうことになっています。」
その言葉に微笑む神林。
執務室
「・・報道の通りです。
僕は、神林先生に、辞任の意向を伝えました。
残り一週間、きっちり仕事をして、官邸から、出ていこうと思っています。」
啓太と向き合う形で座るひかる、秋山、西、郡司、百坂、理香。
「最後の一週間ですか・・。」と秋山。
「そうですね。」と理香。
「わかりました!」と西。
「がんばりましょう!」と百坂。
「・・でも、たった一週間・・」とひかる。
「何が出来るんだろう。」と西。
「いや、今までどおりでいいんじゃないですか?」と啓太。
「でも、最後に何か一つドカンとやりましょうよ。」と秋山。
「例えば?」と西。
「例えば・・」と秋山。
「少子化対策?」と啓太。
「少子化!」とひかる。
「あれ、ちゃんと取れてるんですかね。育児休暇ってやつ。」と啓太。
「それは1週間では無理だと思います。」と百坂。
「実現には予算が掛かりますし。
それ以前に、児童手当法などの改正も必要です。」と理香。
「そうか・・。
じゃあ、インターネット犯罪の撲滅。」
「インターネット。」とひかる。
「それは、表現の自由との関係が面倒ですね。」と秋山。
「どうやって規制するかが、難しい問題ですよ。」と郡司。
「それも1週間では無理です・・。」と西。
「教育改革。」と啓太。
「教育改革!」とひかる。
「教師をやっていた時に沢山あったんですよ。
もっとこう改善できないかなーってことが。
例えば、カリキュラム。」
「教育内容を変えるには、中央教育審議会を経て、
学習指導要領を改訂する必要があります。」と百坂。
「もっと現実的な提案を。」と西。
「じゃあ、各都道府県に、1箇所ずつ星が観測出来る場所を!」と啓太。
「それは総理のご趣味でしょう。」と郡司。
「花粉症をなくす!」と啓太。
「1週間じゃなくせません。」と秋山。
「ですよね。」と啓太。
「・・・・・・・・」
「なさそうですね、1週間で出来ること。」とひかる。
「・・・・・・・」
「あ。」と啓太。
「何か?」と百坂。
「いや、いいです。」
「おっしゃって下さい。」と理香。
みんなが身を乗り出す。
「いや、あの・・
毎週水曜日に、ここで、官邸連絡会議があるじゃないですか。
その時に、お茶が、出るんですけど、
僕あのお茶飲んでる人見たことないんですよ。」
「・・・」
「無駄だからやめません?あのお茶。」
「・・・」
「・・・」
朝倉邸
「で、結局お茶になったのか?」と韮沢。
「決定しました。」と啓太。
「他になかったんです。」と理香。
「百坂さんたちも仕方ないって。」とひかる。
「なんという小さな話だ。
俺が支えた朝倉内閣最後の仕事が、官邸連絡会議のお茶撤廃か。」と韮沢。
官邸
「お茶を、やめる!?」
「官邸での会議のお茶に関しては、会議接遇担当のお二人が
担当されているんですよね?」と西。
「そうですけど。」
「仕入先の業者と、年間のお茶代を教えていただけますか?」と秋山。
「どうしてやめるんですか?」
「水曜日の官邸連絡会議だけです。」と秋山。
「出席者の方に叱られます。」
「喉が渇くじゃないかって。」
「誰も飲んでませんよ。」と秋山。
「いや、お茶を出すのが決まりなんですよ!」
「だから、それを変えようと。」と西。
「私達の仕事を取り上げようって仰るの!?」
「そんな大げさな・・」と秋山。
「そんな大事なことは、上に言ってくださいよ、上に!」
官邸会計課
「お茶をやめる!?」
「お茶葉の購入にかかる経費は、年間で、56万円。
本当に、それだけ必要なんでしょうか。」と郡司。
「官邸連絡会議のお茶をやめたところで、いくらの経費節約に
なるって言うんですか。」
「でも毎回捨ててるわけでしょう?
無駄なものは、無駄だと。」
「例年通り、お茶を使っていかないと、
来年からは予算が削られてしまいます。」
「いやいや、そういう理由は、」
「私にそんな話をされても困ります。
上が判断することですよ、そういうことは。」
内閣府
「お茶をやめる?」
「これは、総理の要望です。」と百坂。
「まさか!」
「仕入れ業者に確認したところ、昨年は100グラム650円だったのが、
今年は100グラム800円に変わっています。
これは、無駄な経費では。」
「なぜそんな、重箱の隅をつつくようなことを。」と柏木参事官。
「小さなことなら変えていけるでしょう。」
「長年続いてきたことには、それなりの意味があるはずです!」
「はあ・・。」
禁煙室でタバコを吸う啓太と檀原。
「こんなことになると思わなかったなー。」と啓太。
「お茶の件ですか?」
「もっと簡単にやめられると思ったんだけど。」
「・・・総理は、今までいくつも前例を破ってきたじゃないですか。」
「うん?」
「八ツ島湾のクラゲの時も、アメリカ通省代表がいらっしゃった時も。」
「・・・」
「大丈夫ですよ。」
「はい。」啓太が微笑む。
隙を狙って啓太のわき腹を突く檀原。
「すみません!」
「百坂さん。すみません、去年の官邸の予算内訳を出していただいても
いいでしょうか。」
「今、お持ちします。」
「お願いします。」
啓太が執務室に戻っていく。
「美山さん。総理にはまだやりたいことがあるんじゃないですかね。」とひかる。
「え?」
「だって全部総理の口から出たんですよ。
少子化問題を何とかしたい、
インターネット犯罪を無くしたい、
教育改革って。」
秘書たちがひかるの言葉を考える。
そこへ、誰かが訪ねてきた。
執務室
「内閣府の、野々村でございます。」
「わざわざ来ていただいてすみません、事務次官。」と啓太。
「いいえ。」
「実は、毎週水曜日に開かれている官邸連絡会議のお茶を、
廃止したいんですけど。」
「・・そうでございますか。」
「ま、大きな経費節約には繋がらないと思うんですけど、
でも、誰も飲まないお茶を毎回出すっていうのは、
無駄かなーって思いまして。
事務次官の方からご指導していただいても宜しいでしょうか。」
「それは・・構いませんが。」
「お願いします。」
「次の総理が、元に戻したいといわれれば、すぐに、
戻させていただきます。」
「・・・」
「長年やって来たことを、わざわざ変える必要がどこにあるんでしょうか。
失礼ですが、退任間近の総理の気まぐれで、
内閣府や、官邸の職員たちが、右往左往させられるのは、
いかがなものかと。」
「僕は気まぐれで言ってるんじゃないんです。
たかだかのお茶でも、国民の税金を使っていることには変わりないんです。
それに何事も官邸が率先して取り組んでいかなければ、
他の省庁も地方自治体も、世の中全体も、動かないですよ?」
「まあ・・」
「長年やってきたから、正しい。
それは説明になっていません。
小さい問題だから見過ごしていい、
そういう考え方は大きな問題を諦めてもいいってことに
繋がると思います、僕。」
「・・・」
「野々村さん、どうしても、お茶が飲みたいって方には、
ご自分で持ってきてもらったら、いかがでしょうか。」
「はあ。」
「いや僕、この問題を考えてから、自分で水筒を持ってくるように
したんですけど、これが、意外といいんですよ。
いつでも、温かいお茶が飲めますし、
逆に、氷を入れて、キンキンに冷やしたものも。
あのこれ、どうぞ。召し上がって下さい。」
啓太に勧められ、水筒のお茶を飲む野々村。
「どうですか?」
「・・・美味しいです。」
「でしょ?意外とこう、いい感じになりません?
水筒のお茶って。」
「・・・」
野々村が執務室から出てくる。
起立する秘書官たち。
「本当に、お辞めになるんですか・・。
お茶の件は了解しました。
お茶意外にも、内閣府で見直せるところがないか、
色々なことを、検討してみます。
失礼します。」
秘書官たちは深く頭を下げ、野々村を見送り・・
そして、執務室のドアを見つめる
執務室
啓太は総理大臣の椅子の後ろに掲げられた
内閣・政府の紋章、五七桐を見つめ・・。
朝倉家
「はい、カンパイしましょう。」啓太がビールをひかると韮沢に渡す。
「何のカンパイだ?」と韮沢。
「お疲れ様です。」と啓太。
「お疲れ様・・。」とひかる。
「はい、カンパイ!」
「カンパイ!」
「・・・終わったのか。」と韮沢。
「終わっちゃったんですね。」とひかる。
「あれ?美山はどうした?」
「仕事が残ってるって。」
秘書官室を見渡す理香。
朝倉家のインターホンが鳴る。
「誰だ?」と韮沢。
「美山さん!?」とひかる。
「え!?」
啓太が嬉しそうに玄関に向かう。
訪ねてきたのは、小野田(中村敦夫)だった。
「実は私は、朝倉誠先生とはよーく飲んだんですよ。」
「そうなんですか。」
「今の政治のこと、これからの世の中のこと、
散々語り合いました。
あなたはまだお父様のことを許していらっしゃらないかもしれない。
しかし私は、立派な政治家だったと思っています。
朝倉先生には夢があった。」
「夢?」
「日本は、アジアの国々と共に生きていかなければならない。
そうしないと日本の将来はない。
それには、子供同士の交流が必要だ。
それが朝倉先生の信念でした。
先生が亡くなられた飛行機事故。
あれは、ベトナム観光に出かけていったわけじゃない。
現地の小学校を視察にいく途中だったんですよ。」
「え!?」
「無念だったはずだ。
遣り残した仕事が沢山あったんだから。」
「・・・」
「総理は、大堂商事疑惑の責任をお取りになるつもりですか。」
「はい。」
「あなたらしい、清清しい選択だ。
しかし・・いかにも政治家的な考え方とも言える。
確かに総理には任命責務がありますよ。
しかし本当に国民は、そういう責任の取り方をあなたに望んで
いるんでしょうか。
あなたの良さは、政治の素人だってことですよ。」
書斎
窓際に飾られた写真を見つめる啓太。
そして、小野田に言われたことを考える。
『もう1度、初心に帰ってみたらいかがですか?
あなたが政治の世界にやってきたことは、
決して偶然ではない。』
『父親の意志を継いで息子が立つ。
あなた以上の候補者はいないんです。
子どもたちに、希望ある未来を用意してあげたいとは思わない?』
理香の言葉を思い浮かべ・・。
執務室を覗く理香。
『でも僕は、世の中に、必要な悪があるなんて
子どもたちに教えたくありません!』
啓太の言葉を思い浮かべ・・。
書斎
『そのチャンスがいらないなら私に下さい!
もし私が総理になったら、身を粉にして働く!
この国の人たちのために、必死になって働く!』
執務室・書斎
『日本政友党・第18代総裁は、朝倉啓太君に決定いたしました。』
執務室
『あなたのことは絶対に忘れません。
僕の人生を変えた人だから。』
執務室
『あのモジャモジャ頭の先生が、こんなに近い人になるなんて。』
書斎
『東京から来た気の強い女性が、こんなにも大事な人になるなんて。』
子どもたちがくれた色紙を手に取る啓太。
みんなからのメッセージの中央には、啓太が子どもたちに贈った言葉、
『アウトでも全力で走れ』と書かれていた。
『モジャ倉走れ!
おれも走る りょうすけ』
『信じてるよ!先生!
小島みく』
『モジャ倉も全力で走れよ!!海』
『国会王子!みんな待ってるよ!斉藤』
『あきらめるな!淳之介』
『ぼくも最後まで走ります。琢磨』
『モジャ倉!あきらめちゃダメだ!!しんや』
『朝倉総理はぼくたちのヒーロー 和人』
メッセージに微笑む啓太。
そして・・・啓太が部屋を飛び出していく。
執務室
啓太の姿に驚く理香。
「総理・・」
「美山さん、」
「はい。」
「あなたにお願いしたいことがあるんです、二つ。」
「え?」
「まず一つ目は・・・
総理として、みんなに僕の気持ちを伝える機会を
作ってもらいたい。」
「みんな?」
「そう。みんなにです。」
「わかりました。すぐに考えます。
ふたつ目は?」
「・・あ、二つ目は・・
やっぱり、みんなに気持ちを伝えたあとに、
美山さんに教えます。
お願いします。」
「はい。」
テレビクルーが官邸にやって来る。
秘書官室
「総理が直接テレビで国民に語りかけるなんて・・。」と秋山。
「アメリカ大統領みたいだな。」と西。
「日本じゃ前代未聞だな。」と百坂。
「緊張されてるんですか?」理香が啓太に声をかける。
「かも。」啓太が笑う。
理香は啓太に掌を向け微笑む。
その手に自分の手を重ねる啓太。
「総理。お願いします。」と百坂。
「はい。
・・・じゃあ。」
「頑張って。」と理香。
執務室
啓太に敬礼する檀原。
啓太は微笑み、総理の席につく。
「生放送です。みなさん、お静かにお願いします。」
テレビスタッフが秘書官たちに言う。
「本番10秒前、8,7,6,5秒前,4,3,2!」
「みなさん、こんにちは。
朝倉啓太です。
実は今日は、僕が内閣総理大臣に就任して、
丁度、50日目なんです。
そんな今、朝倉内閣は、一つの、区切りをつけようとしています。
僕は内閣総理大臣として、今の気持ちを、直接、
国民のみなさんに伝えたい。
そうわがままを言って、この機会を、作っていただきました。
まず僕は、みなさんに、謝らなければなりません。
18年前、政界に未公開株がばら撒かれた大堂商事疑惑。
この時、不正な利益供与を受けた、政治家を、
僕は何も知らずに自分の内閣の、閣僚に、
任命していました。
8人も。
僕は、みなさんを失望させたと、本当に痛感しています。
申し訳ありませんでした。
・・・今日は、みなさんにいくつか、お話したいことがあります。
出来るだけ、自分の言葉で。
難しい言葉を使わずに。
以前僕は、小学校の教師をしていました。
ですから、小学5年生の子どもにも、わかるように、
話をしたいと思います。
みなさんもご存知の通り、僕は、国会議員になる3ヶ月前まで、
政治の経験は全くありませんでした。
長野の、平凡な、本当に平凡な小学校教師で。
正直言って、政治に特別な感心も、ありませんでした。
でももちろん、政治の世界で何か事件が起こったり、
話題になる人が出てきたり、
国民的なブームが起こったりしたときは、
人並に、ニュースを見たりしていました。
でもだからと言って、その時に選挙に行ったか・・というと・・
・・・すみません。行かないこともありました。
政治は大事なことだって頭ではわかっているんですけど、
・・・どうも身近に感じることが出来なかったというか・・。
というよりも、政治に何かを期待することは、ありませんでした。
あなたの一票で政治は変わるって、よくそう言いますけど、
自分の一票で、政治は変わったって実感したことは、
ありませんでした。
その瞬間だけは、誰々が勝ったとか、
何々党が躍進したとか、
盛り上がったりするんですけど。
結局、その時だけで、何も変わらないし、
選挙のときに言っていた公約も、いつの間にか、うやむやになってるし。
あとになって考えると、あの時、盛り上がった自分は、
何なんだろう。
期待したことが、バカみたいに思えてきて、
もうどうでもいいやって気になっちゃって。
やっぱり、自分の一票で政治が変わるなんて、
思いませんでした。
そんな僕が、なぜか、選挙に出ることになってしまって。
なぜか、当選して、国会議員になったんです。
政治の世界は、戸惑うことばかりでした。
まああの、小学校の先生をやっていたので、
先生っていう風に呼ばれるのは、ぎりぎり大丈夫だったんですけど、
JRや地下鉄にはタダで乗れるし、
年上の方は、頭を下げてこられるし、
これは、誰だって、偉い気になっちゃうんだろうなっていう風に、
思いました。
でも、政治家になったからといって、何をしていいのかは、
わからなかったんです。
言われるがままに、委員会に、僕も入ったんですけど、
そこで、何を議論しているのか、全く理解出来なくて。
まああの、委員会って言ったら、予算委員会っていうのは
聞いたことはあるんですけど、
その時に、僕の秘書をやってくださっていた方が、
本会議は、小学校で言えば、全校集会。
常任委員会は、図書委員会。
特別委員会は、運動会の実行委員会だって考えればいいんだって
教えてくれたんです。
やっとそれで、あ、なるほどって。
そんなレベルだったんです。
恥ずかしいんですけど。
でも何回か、聞いていれば、会議の内容はなんとなくわかってきます。
でもその議論っていうのは、結論が出ないままに、
終わっちゃったりするんです。
つまり、与党と野党がそれぞれの意見を、
主張し続けているだけで、かみ合うことも納得することも、
もちろん、考え直して、相手の意見に同調することもなく、
強行採決されちゃったりするんです。
え・・これで終わり?って、僕の頭の中はクエスチョンマークだらけ
でした。
・・・あと、僕は、小学校の時に、生徒に、こういう風に
教えていたんです。
何か問題が会った時は、答えが見付かるまで議論しよう。
それで、相手の意見をちゃんと聞いて、
もし自分が間違っていたって思ったなら、
それは、素直に認めようって。
でも、ここではそんなルールは通用しなかった。
議員っていうのは、党や、派閥の方針に従うのは当たり前で、
ある人なんかは、今までずっと反対してきた法案を、
派閥の先輩議員が賛成って回った途端、
自分も賛成に回っちゃったりするんです。
それで、その法案が、本当に国民の為になっているかどうかは、
誰も確かめようとしないんです。
僕は政治の世界に入ってきたんですけど、
ますます、政治を遠く感じるように、なっていました。
そんな時です。総裁選に出ないかって話をいただいたのは。
一年生議員どころか、政治のど素人に、総裁選・・
最大与党の、政友党の総裁っていったら、
総理大臣ですよ。あり得ないっていう以前の話でしょう?
いや、最初はもちろん断りました。
でも・・ふと思ったんです。
もし自分が、総理大臣になったとしたら、
子どもたちに、希望ある未来を、用意してあげられるかもしれないって。
・・・結局、僕は、総裁選に出ることになってしまいました。
ところが、その、他の候補の方たちの意見を聞いているうちに、
いやそれは違うんじゃないかな、とか、
自分だったらこうするっていう思いみたいなものが
どんどん出てきて。
そこで気づいたんです。
政治には感心ないっていう風に思っていたんですけど、
自分の中にも、世の中がこうなって欲しいとか、
こうしたいっていう気持ちがあるんだって。
・・・僕は、総裁選の時に、みなさんにこう約束しました。
みなさんと、同じ目で、今行われている政治の間違いを見つけ出し、
そしてそれを正します。
みなさんと同じ耳で、弱者と言われる人たちのどんな小さな声も
真剣に聞きます。
みなさんと同じ足で、問題が起きている現場にためらうことなく
駆けつけます。
みなさんと同じ手で、自分・・自分も、汗まみれになって働いて、
そして、この国の、進むべき道を指し示します。
僕の全ては、みなさんと同じです。
僕は、総理になっても、その約束は、ずっと、忘れないでいました。
僕は、政治のプロじゃない。
権力を持ちたくて、総理大臣をやっているんじゃない。
僕のことを、指示してくれたり、
僕のことを期待してくれる人たちのために、働くんだ。
そう思って今日まで、やってきました。
でも、結果的には、みなさんのことを、裏切ることになってしまいました。
大堂商事疑惑は、朝倉内閣の重大な不祥事です。
内閣だけではなく、8人の、閣僚のほか15人もの国会議員が、
不正な金を受け取っていたということは、
この国の、政治の信用を失う大失態です。
ほらやっぱり政治家は汚いことをしているじゃないか。
そんな政治家が大臣になるのか!?
だから政治家は信用出来ないんだ。
みなさんの声が、はっきり聞こえます。
僕もそう思います。
そんな政治家たちが、それを許した、総理大臣が、
何食わぬ顔をして、居座り続けているのは、
間違っています。
・・・僕は改めて、みなさんに、お詫びします。
本当に、申し訳ありませんでした。
でもどうかこれだけは、言わせて下さい。
僕はこの政治の世界に入って、希望を感じることも、沢山あったんです。
そしてそこから、色んなことを、学ぶことが出来ました。
どうか知って下さい。
権力には一切執着せず、熱意と、使命感、
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