1、『合コンの掟』 「女はなぜ愛に執着するのでしょうか。 アンドレ・ジイドはこんなことを言っています。 女にとって男とは、実は愛を引っかけておくための釘ぐらいの 価値しかなっていないと。 しかし、釘なら何でもいいかというと、そうではなくて、 何もかも投げ捨てて、一生自分の愛を捧げてもいい。 そういう一本の釘を探して、女はじたばた動くのです。 ・・・ 申し遅れました。 東済商事、勤続満10年。野田奈央子、32歳です。 独身です。 いくつか恋はしました。でも、そのたった一本の釘が まだ見つかりません。 私、じたばたしています。」 満開の桜並木を歩
2、く主人公・野田奈央子。 オープニング曲、"WE WILL ROCK YOU" (QUEEN/東芝EMI)をバックに カメラ目線で語り始める篠原涼子さん。第1話、スタートです。 東済商事・経営戦略部。 午後5時半を告げる時報と共に席を立つ、契約社員と派遣社員。 数年前から女子の正社員を採用しなくなった東済商事には、 奈央子のような正社員の他、契約社員、派遣社員と様々な形態の女性たちが 働いている。 経営戦略部での奈央子の役回りはそういった女子社員の教育係といった ところもある。 ある日、奈央子は結婚相手探しに必死の契約や派遣の子たちに頼まれて 社内合コンを仕切る
3、 参加したのは、契約社員の長谷川真奈美(市川実和子)(27歳)、 派遣社員の早乙女加奈(山口紗弥加)(24歳)、 派遣社員の千葉香織(21歳)、 正社員の加藤博美(戸田菜穂)(31歳)。 若い3人の自己紹介に沸く男達。 一方、奈央子はワインに、博美は食事に夢中です。(笑) 「こちらの美女は?」と言われ、一年後輩の博美を紹介する奈央子。 「あ、正社員ですか。」と男性。 「しかも若くなくてすみません。」 そう答える博美に、参加者全員静まり返る。 気まずい雰囲気を変えようと、 「今日はエネルギー部のおごり。じゃんじゃん飲んで。」と ワインを勧める奈央子。 「野田
4、さん、いつもありがとうございます!」後輩が言うと、 「そんなにいつも合コンしてるんだー。」と男性。 「そうじゃなくって。日頃から野田さんにはお世話になってているんです。」 「怖いお局さんから庇ってもらったり。」 口々に、奈央子を誉める後輩達。 「女が女を誉めるのって、気持ち悪くない?」 博美の言葉に黙り込む後輩たち。 「加藤さんは悪魔みたいに口が悪いんだけど、こう見えても、趣味が 小唄と三味線。」 だが男達は奈央子の言葉を無視し、後輩達と盛り上がる。 「合コンしきってくれたお礼に、野田さんの為にすごくいい男 用意したんですよ。もうすぐ駆けつけますから。」 「何回
5、その手に騙されていると思っているの? 私のことはいいから。」そう答える奈央子に、 「赴任先の北京から戻ったばかりなんですよ。 コロンビア大学でMBAを取った超優秀な35歳。」 丁度その時、噂していた男・宮本()がやってきた。 宮本は、奈央子の隣の席に腰掛ける。後輩たちも宮本に注目! 博美だけは、黙々と食事を取リ続ける。 自己紹介をしながら、奈央子の心の声が字幕に出ます。 (こんな人が、まだ残っていたんだ。 努力すれば 好きになれるかもしれない。 でも、MBAじゃライバル多そう。) 「ずっと海外で、本社は5年ぶりなんです。 特に北京支社は過酷ですkらね。早く
6、戻りたかったですよ。」 (中国人の秘書とデキてたかも) 「じゃ、あとは本社で出世するだけですね。」と奈央子。 「今は出世より、彼女1人を見つけたいな。」 「うわっ。ホントかな~!?」 (はしゃぐなワタシ!今のばかっぽい) (私この人とキスできるかな?) 「吸っても構いませんか?」 「えっ!?」 (ここで?) 「本社、禁煙だから。」 「あぁ、もちろんもちろん、どうぞ!」 (タバコ吸う人はヤだな。早死にしそうだし。 この際、未亡人でもいいか。) 奈央子と宮本の2ショットにヤキモチを焼いた女達は 席替えしようと言い出す。 今度は、後輩達となにやら盛り上がる宮本。
7、 1人になった奈央子は、食事を頬張り、ワインを飲む。 1次会修了。その後みんなはカラオケに行くようだ。 タクシーを止めた宮本は、奈央子に送っていくと声をかける。 その時真奈美は、同じ方向だからとタクシーに乗り込んでしまう。 二人が乗ったタクシーを見送る奈央子。 「あの子成増でしょう?どこが帰り道なんだか。」 博子が声をかける。 「合コンでそういうことは言いっこナシ。 でもギャルズは元気でいいね!」 「言ってて虚しくないですか?」 「まあね。」 博子と別れた後、電車の中。 「合コンに運命の出会いなんてあるわけないって・・・」 その時、酔っ払いが車両を歩いて
8、くる。向かいの男性に目をやり 「もし、私が絡まれたら、この人・・・」 男性に手を引かれ走り出す自分を想像する奈央子。 酔っ払いは奈央子の隣に座り絡み、頭を小突く。 みんな、見て見ぬ振りの中、男(加藤雅也)が酔っ払いに 「次の駅で降りませんか?私が話を聞きます。」と一緒に降りる。 酔っ払いは男を小突き、その拍子に倒れてしまう。 男は、「終電なんで」と1電車に飛び乗る。 車内に拍手が起こる。 「大丈夫でしたか?」 「ありがとうございました。 こんなに勇敢な方がいらっしゃるなんて、思いもしませんでした。」 「勇敢だなんて。足がガタガタ震えていますよ。」 男は奈央子の手
9、を自分の足に乗せる。 (早く!早く!名前と携帯番号を聞くのよ。) 「じゃ、僕はこの辺で。」 男が席を立つ。 「あの・・・」 その時、男の左薬指に指輪を見つける奈央子。 「いえ。何でもないです。ありがとうございました。」 「さよなら・・・。」彼が降りたあと、そっと呟く奈央子。 「いい男はみんな結婚している。 それはこの世の定めじゃない。 そんなこと、もう100回学習したのに。」 自宅に戻り、独り言で語る奈央子。 「危ないところだった。 いい男を見たら、話しかける前に、ちゃんと指輪をチェックすること。」 そして1人、ビールを飲みなおす。 「不倫は絶対にし
10、ない。それは私の掟だ。」 翌朝。母親(由紀さおり)からの電話で起こされる奈央子。 「年が明けてから、ずっと話したかったのに。 顔も見せてくれないし。 ほら、あの杉田さんのことよ。 杉田かおるさんに決まってるでしょ。 40歳でも女はちゃんと、幸せになれるのね。 ああいう素敵なご縁があれば。だからなおちゃんも。」 母の小言を適当にあしらい、電話を切る。 「この桜見るの、11回目か。」 通勤途中、奈央子は桜を見上げ、そう呟く。 会議にやってきた宮本に、携帯の番号を書いたメモを渡され 顔がほころぶ。 人事異動で、経営戦略部に新入社員の黒沢明彦(赤西仁
11、22歳)と 繊維部から立花渡(山口馬木也)という男性社員二人が配属されてきた。 女子社員たちは男前な彼らの配属に浮き立つ。 奈央子の前の机に座ることになった明彦。 奈央子に「はじめまして。黒沢です。」と挨拶すると、 「自己紹介は歓迎会で。」と笑顔で返される。 研修日報の部署欄に「工学部」と書きかける明彦。 それに気付いた奈央子は、 「ちょっと待って。その欄は、工学部、経営戦略部って書いてね。 あんたもうね、学生じゃないんだから。」と言う。 ボールペンで間違いを塗りつぶす明彦。 「修正液使ってね。」修正液を渡す奈央子。 「あの・・・何て呼んだらいいですかね?」
12、 「とりあえず、書き直してね~。」 「まぁまぁ、俺に任せておけ。」 もう1人の新人・立花が、明彦にそっと耳打ちする。 立花は奈央子に何年入社か質問しつつ、一方的にまくしたて、 「同期の人はもうみんな結婚してるでしょう?」と言う。 「あなたたち、ケンカ売っているの?」 「失礼しました。繊維部から来た立花渡です。 初対面なら、お互い名乗りあうのが礼儀ですよね。」 「・・・野田です。」少し笑って答える奈央子。 明彦は、胸に着けた奈央子のIDを覗き込み、 「よろしくお願いします。野田奈央子さん。」と言い握手を求める。 だが奈央子はそれには応じず、「よろしくお願いします。
13、」とだけ 返事する。 女子社員たちは彼らの様子を全て見ていて、クスクス笑っていた。 経営戦略部部長・坂口(升毅)(49歳)が又新しい派遣社員の教育を 奈央子に頼んできた。 「今の派遣社員がまるっきり役に立たないので、チェンジして もらった。」 チェンジ、という言葉に怒る奈央子。 派遣・契約社員たちの顔色も変わる。 そこへ新しい契約社員、中野サキがやって来た。 「わからないことがあれば、何でも、このベテランの野田君に聞いて。」 部長はそう言い部屋を出ていく。 社員食堂。 「え~と、女の人が、契約社員と派遣社員、それと・・・」 立花は明彦に質問され答えていた。
14、 「一般社員。すなわち、事務職の正社員と、総合職の正社員。」 「そんなにいっぱいいるんですか。どうやって見分けるんですか?」 「ケバーいのが派遣。 5年の契約期間が切れるまでに、男を見つけようと必死なのが契約。 この二つが、ギャルズと呼ばれている職場の花。 30過ぎて売れ残っているのが、正社員。 この7年間、うちの会社は女を採用してないから。 パートのおばさんは、お局さん。 あれでもれっきとした事務職の正社員だよ。 居直るっていうか、もう現役降りたっていうか。 女ってそうなると、服とか化粧とかどうでもよくなっちゃうんだよ。 どっちつかずで、一番中途半端
15、なんは、30代前半の事務職だな。 まだ、おばさんになる諦めがついてないっていうか。」 「先輩ってやけにおばさんに詳しいんですね。」と明彦。 「繊維部は女が多くて、俺苦労したから。」山口はそう答える。 「がんばろ。」明彦はそう呟き、山口のあとに続く。 阪口部長に呼ばれて昼食に蕎麦屋に行く奈央子。 そこで見せられた1通のFAX。その書類の名前一覧に 『人事部/ウーパールーパー』 と書かれている。 人事部長本人も、もう見てしまったらしい。 「長谷川君にリライト頼んだら、このまま各部に配られちゃって。 長谷川君さ、この間もこんなミスがあったじゃない。 ちょっと言ってお
16、いてくんないかな~。」 「またその役目か・・・。」 「女が女を叱るというのは、何と損な役割なんだろ。 これを押し付けられたとたん、女は一気に年を取るような 気がする。」 真名美を呼び出し、 「どうしてこういうことになるのかなぁ。」と尋ねる奈央子。 「パソコンのせいだと思います。 急いでいたから、元原稿見ながらブラインドタッチしたんです。 私は人事部長って入れたつもりなんですけど、 ウーパールーパーって変換されちゃったんですね。(笑)」 「でもその変換を登録したのは、あなたよね?」 「友達とチャットする時につい。」 「うん。前に言ったよね。 打ち終わっ
17、たら、ミスが無いか読み返して、 それでプリントアウトしたらチェックするようにって。」 「あの時、忙しくて。課長にも買い物頼まれていたし。」 だからプリントアウトは早乙女さんに頼んだんです。」 茶碗を片付けにきていた加奈は、 「私、頼まれたからプリントアウトして配っただけなんですけど、 謝ったほうがいいなら謝ります。」 「あのね。謝ればいいとか、そういうことを言ってるんじゃないんだよね。 先輩面して言わせてもらうと、この仕事って、リライトとか コピー取りとか、そういう小さい仕事が積み重なって、 大きい仕事に繋がっていくの。 小さい事を、いい加減でいいやって思っ
18、ちゃうことがダメなの。」 真名美が笑い出す。 「いつも思うんですけど、どういう権利があって野田さんは私たちに こういうことをおっしゃるんですか? こういうのって、私たちに直接仕事を依頼した、その人が 言うことなんじゃないんですか?」 「権利なんてないのよ。私は一緒に働く職場の先輩として・・・。」 「私、野田さんが、そうやっていつもいつも男の人の代理で 言ってくるの、嫌なんですよね。 派遣には、文句言うのも代理でいいって感じで。」 「なかなか鋭いところを突いてくる。」 加奈の言葉に動揺しつつも、奈央子は 「それは、早乙女さんの偏見よ。私も若い頃はよく先輩に注意さ
19、れたの。 うちの男の人って、伝統的に、女にあんまり文句を言いたくないって 人が多いみたいで。 まあさ、こういう口うるさいおばさんが職場に一人や二人は 必要でしょう、ね。」 「わかりました。これからは気をつけます。」真名美は奈央子に謝る。 「お疲れ様でした!」 奈央子が部屋を出ていったあと、 「昨日の合コンの当て付けなんじゃないんですか?」と早乙女。 「それどういう意味かなぁ。」話が聞こえた奈央子がまた顔を出す。 「私、宮本さん横取りなんか・・・。」と真名美。 「私は仕事の話をしているのに、どうしてそういう話になるのかなぁ。」 奈央子を無視して部屋を出て行く加
20、奈。 宮本の件を必死に謝る真名美に、気にしてないよ、と奈央子。 「よかった。私、野田さんがいいなら、がんばります!」と張り切る真名美。 そこへ博美が立ち寄り、 「宮本は止めておいた方がいいですよ。」と意味深なアドバイスをする。 立呑み金太郎。 「会社に入った頃、宮本と同じ部署にいたことがある。」 そう奈央子に話す博美。 「MBAの王子様が現れたなんて、一瞬でも思いませんでした?」 博美に聞かれ否定する奈央子。 「私はとっくに王子様探しなんて諦めちゃったけど、 先輩はまだその夢にしがみついているんですね。 それキツいですよ~。 この年で舞い上がって墜落したら、
21、一生立ち直れませんよ。」 「でもさ。いい出会いさえあれば、女は全部挽回出来る。」と奈央子。 そこへ、同年代の顔馴染み客がやってきた。 女4人、厄年の相談で盛り上がる。 「私たちは矛盾している。 毎日、女の子とおばさんの間で。 夢と現実の間で、揺れている。 独身の女たちはきっとみんなそうだ。 そういう自分のことがすごく好きで、すごく嫌いで。」 憂さ晴らしと厄落としにと、共に厄年の博美の提案で部長を誘い、 奈央子は週末ゴルフに出かける。 そこにはなぜか、立花と明彦が一緒に来ていた。 そこでかつての後輩の沢木絵里子(ともさかりえ)に再会する。 在職時代か
22、ら奈央子に憧れていた絵里子が部長に頼んだらしい。 絵里子は早期に寿退社をし、投資コンサルタント会社社長の夫と 5歳になる娘を持ち、絵に描いたような勝ち組ぶり。 相変わらずのゴルフの腕前と幸せオーラにすっかり調子を狂わされ、 奈央子は散々なラウンドに終わる。 江里子に「主人と3人で夕食を。」と誘われ、丁重に断る奈央子。 「この人、これ以上幸せを見せびらかしたいんだ。」 「残念だな。私、奈央子さんに嫌われちゃったのかな。」 「違うの。今日は加藤の車で来ちゃったから、運転して帰る約束なの。」 そうごまかす奈央子。 だが、加藤は先に帰ってしまい、奈央子と明彦は、江里子の家の
23、車で 帰ることに。 絵里子を迎えに車がやってきた。 奈央子は、江里子の夫・翔一を見て驚く。 なんと電車内で酔っ払いから救ってくれたあの男性だったのだ。 「先日はどうも。」夫 「酔っ払いから助けていただいて。」 絵里子は、二人が知り合いだった事に「縁」の深さを感じると話す。 「まったく世の中の女達というのは、どうしてこういう夫を 楽々と手にしているんだろう。」 奈央子は何もかもを手にした絵里子を羨む。 車を出そうとした時、奈央子の携帯電話がなる。 真名美からで、 「先日の合コンで一緒に帰った宮本にもてあそばれた、 2回目のデートでホテルに行ってしまった
24、ものの、 それっきり連絡がない。」 と電話口でかなり落ち込んでいる様子だ。 自分の体験や細木和子の占いも交えつつ、一生懸命話しかける奈央子。 車内の3人も、彼女の話に釘付けだ。 電話を終えると、絵里子が翔一に言う。 「奈央子さん、私が話していた通りの人でしょう?」 「話してた通りって・・・経験豊富ってことですか?」明彦が尋ねる。 「昔から後輩に頼られて、いつもみんなの相談に乗っているんですもの。 女性として尊敬します。」 「やっぱり女はこれ位天然はいってないと、幸せになれないのかなぁ。」 「絶対に絶対に、又会って下さいね。」 あまりしつこく誘う絵里子に、翔一
25、は 「いい加減にしなさい。野田さんもお忙しいんだ。」と叱り バックミラー越しに奈央子を見つめ「すみません。」と謝る。 社内でPCに届いたメールに気付く社員達。 『宮本さん、きっと急な出張で連絡がつかない所にいるんですよね。 私、宮本さんのことを信じています。 愛がなきゃ、あんなステキなエッチできませんよね。 連絡待っています。死ぬほどスキです。真名美』 「自爆テロですか。長谷川もやるじゃないですか。」 博子が奈央子に言う。 「違うと思う。 CCで返信したらみんなに読まれちゃう事、 長谷川さん知らなかったんだと思う。」と奈央子。 「ったく、トロいのも程
26、がありますよ。」あきれ返る博子。 そのメールを削除したあと、奈央子は真名美に 「お昼一緒に行こうか。」と声をかけ真名美を連れ出す。 社内を歩くと、みんながヒソヒソ話をしながら真名美を見つめる。 「なんか、みんなが私のコトを見ているような気がするんですけど。」 「やっぱり自分が何したかわかっていないんだ。外で話そう!」 そう言い、会社を出ようとすると、 「野田先輩!」と女性に声をかけられる。 「すっかりご無沙汰しております。」 後輩の加世が、結婚の報告と2次会の招待状を渡しに来たのだ。 その招待状を見て驚く奈央子。 なんと、相手は宮本! 「宮本さんって?」 「はい。
27、エネルギー部の宮本さんです。」 真名美は招待状を奪い取り、それを自分で確認し、 「こんなのあり得ない!」と取り乱す。 「この人があのメールの!?」加世は真名美に詰め寄る。 二人を引き離す奈央子。 「先日は、合コンで彼がお世話になったみたいですね。 婚約を隠してまだ合コンに行ってるなんて 思ってもいなかったけど。」 「結婚前に、そういう人だってわかっただけでも よかったじゃないの。」 奈央子が加世にそう言うと 「野田さんに何がわかるんですか? 私この5年間、遠距離の彼繋ぎ止める為にがんばりました。 結婚します。そのためにこの会社入ったんですから。 それに、
28、私もう30です。先輩みたいになりたくないですから。」 奈央子に抱きつき泣きすがる真名美をあやしながらも、 加世に言われた言葉にショックを受ける奈央子。 そんな様子を、立花と明彦は少し離れたところから見つめていた。 この騒動に慌てた宮本。 男子トイレで阪口部長に「プライベートは綺麗にしておけ。」と言われ、 「あの契約の子、あと1年もいるんですか。 なんとかなりませんか?」 「身から出た錆だろ?」 「すみません。・・・何とかお願い出来ませんか? 急に人員削減で、契約打ち切る事になったとか。」 隣の女子トイレにいた奈央子は偶然その会話を聞いてしまう。 「失礼します
29、」 男子トイレに入っていく奈央子。 「宮本さん、この度はおめでとうございます。 それから部長、お話があるんですけど。 今すぐここでお話ししないと手遅れになるのでお願いします。 契約社員の長谷川真名美さんのことですが 確かに仕事はイマイチですけど、契約を打ち切られるほどのミスは していないと思います。」 「職場にあーいうメールをばら撒くのは、大きなミスじゃないんですか? ルール違反です。」山本が言う。 「最初にルール違反をしたの、あなたの方じゃないんですか?」 「合コン行ったことですか?独身最後にちょっとハメを外しただけですよ。 あの時は野田さんだって、楽
30、しんでいたじゃないですか。 あ~~~。 僕があなたじゃなくて、若い子の方に行ったのがまずかったかな。 気分を害されたなら、謝ります。」 そう言われ、黙り込んでしまう奈央子。 「部長・・・。 長谷川さんどうするんですか?」 「まぁ・・・。野田君の気持ちもわかるけどね。 あそこまでやった以上、彼女も会社に居づらいだろう。 長谷川君自信の為にも、転職してスッキリした方がいいなじゃないかな。」 「転職なんてそんな簡単に言わないで下さい! 契約社員のクビは、トイレの密談で飛ぶんですか? 長谷川さんは・・・長谷川さん、会社去ることないと思います。」 そう言い、ト
31、イレを後にする奈央子。 職場に戻った奈央子は、自分の机にぼ~っと座っている真名美に 次々と仕事を与えていく。 「野田さん。私あと一年しか会社にいられないんです。 それなのに、何やっているんだろう・・・。」 「・・・うん。もう忘れよう!」 真名美の机の上に置かれたネクタイを手に取り、そう諭す奈央子。 「お給料貰っているんだから、仕事しよう。 男は裏切っても、仕事は裏切らないよ。」 奈央子のこの言葉を、他の女性社員たちも聞いていた。 「チャットの前に、伝票整理してね。」 無言でキーボードを叩く加奈。 「早乙女さん、聞こえた?」 「聞こえましたよー。仕事は裏切らな
32、い、でしょ? でもそれって、正社員の野田さんだから言えるんですよね~。 派遣の私たちにそんなこと言われたって、 『チェンジ!』の一言で、私たちは切られるんです。」と加奈。 そんな女性達のやり取りを、明彦は黙って見ていた。 時報が鳴り、一斉に帰り始める派遣&契約社員。 だが、真名美はやり掛けの仕事を放り出さなかった。 部長に書類を確認してもらい、各部に配布に行く真名美。 そんな様子を優しく見守る奈央子。 「やれば出来る子なんですよ。」 「・・・しかし、もう手遅れかもしれない。 宮本も必死だから、今度は人事部長に泣きついたらしい。」 奈央子の様子をそっと見守る博
33、子、そして、明彦。 博子が奈央子の肩を叩く。 「さっき、給湯室からこれを拾ってきたんですけど。」 それは、真名美が捨てたものだった。 宮本がラブホで忘れたらしい。 「実は・・・ 私も会社に入ったばかりの頃、宮本にやり逃げされたんです。」 博子の告白に驚く奈央子。 「いつか仕返ししようと思っていたんです。使えそうでしょ?」 とネクタイを摘まみあげる。 仕事を終わらせ、式場に打ち合わせに行こうとする宮本に 博子が声をかける。 「お久しぶり。 コレ、お返しします。」 『忘れ物その?』と書かれたメモの付いたネクタイを手に、 1歩1歩宮本に近づく博子。 「つま
34、み食いのたんびに、忘れ物をする男だってバラしてもいいかしら。 あなたの大事な婚約者に。」 「イヤイヤイヤ!!」大慌ての宮本。 「じゃ、どうかご無事に。ステキな結婚式を。」 なるほど! メモをつけることで、昔の忘れ物、としてネクタイを利用したんですね。 何年もの前の火遊びを強請られ、宮本は慌てたわけですか。 「ああそう。じゃ、契約はステイということで。 了解。君がそう言うなら。」 接待先に掛かってきた電話に、そう答える部長。 折り返し、奈央子に電話をする部長。 「今宮本君から電話があってね、トイレでの密会は撤回したいそうだ。」 奈央子は真名美が会社に残れる事を喜び
35、そして部長に言う。 「チェンジなんて言葉は二度と使わないで下さいね。 その一言で、やる気をなくす女の子もいるんです。」 「はい、わかりました。お疲れ様。」部長はそう返事する。 「私はいつ、女の子からトラブル処理のおばさんに なってしまったんだろう。」 夜桜を見上げる奈央子。 「あの時は、嬉しかったなぁ。」 会社から採用を知らせる電話を貰った日を思い出す。 涙して一緒に喜んでくれた母が言う。 「女はね、男の人と肩を並べて仕事をすることなんかないのよ。 職場のみんなに可愛がってもらって、 その中から、これっていう男の人と、結婚すればいいのよ。 東済商事
36、に入れただけで、なおちゃん、女の幸せを掴んだのも 同然なんだから! なおちゃんって、何て運のいい子かしらね。 パパが帰ってきたら、お祝いしましょう。」 「自分の前には、限りない可能性と幸福が広がっている、 とまでは思わなかったけど、 結構いい人生が待っているような気がした。 あれから、11回の春がきて、あの日と同じ桜が今も咲いている。 でも、新しい自分は見つからない。 ここから私を連れ去ってくれる人もいない。」 桜の花が舞い落ちる中、涙をこぼす奈央子。 「野田さん!」その時、明彦に声をかけられる。 「お疲れ様。」涙を隠し、帰ろうとする奈央子。
37、 「待って下さい!」 「どうしたの?黒沢君。」 「俺、女の敵は女だと思っていました。 長谷川さんのためにあそこまでやってあげる野田さん、 信じられないっていうか・・・。 感動したんです。 スゲーかっこよかったです、今日の野田さん。」 「黒沢君も変わっているね。」 「お願いが・・・あるんですけど。」 「何かな?」 「お願いします!」頭を下げる明彦。 「やだ!ちょっと待ってよ! あの、気持ちは嬉しいんだけど、 私、あなたより10こもおばさんなんだから。」 「おばさんなんて止めて下さい! 今日から、アネゴって呼ばせてもらいます。 お願いします!アネゴ
38、 野田さんに、ぴったりでしょ?」 訳が分からず呆然とする奈央子。 「じゃ、お疲れ様でした。又明日・・・アネゴ!」 そう言い残し帰っていく明彦。 「・・・アネゴ!?」 博子と真名美が待ついつもの店に合流する奈央子。 「加藤ありがとう!」奈央子は博子に耳打ちする。 「今日、黒沢にすんごいムカつくこと言われちゃった!」 「あの新入社員ですか?私が仕返ししてやりましょうか?」と博子。 深く追求され、はぐらかす奈央子。 女たちは、カンパイする。 『アネゴの正義』
39、 野田奈央子(篠原涼子)がオープンテラスで同僚の加藤博美(戸田菜穂)と 食事をしていると、一通のメールが届く。 メールを読み上げる奈央子。 『私悩んでます。野田さんだけに打ち明けたい事があります。』 「私はよく、女子社員からのっぴきならない秘密を打ち明けられ 相談を持ちかけられます。 もう嫌だ、もううんざりだと思いながらも、受け入れてしまうのです。」 「それはもう性分だから仕方がないですよ。 性分っていうのは、性格とは違って、その人のパーソナリティーに 宿命みたいなものが組み合わさったものなんです。 性格は変えられても、性分は帰られません。」と博美。
40、「あんたってさ~、絶望的なことを平気な顔して言うよね~。」 奈央子の携帯にメール着信音。 今度は真名美(市川実和子)からだ。 『大至急相談に乗ってください!!』と書かれたそのメール 「おそらく私は、口の堅い、しっかりした女に見えるんでしょう。 しかし、女が幸せになるためには、うっかりしていて、尚且つ ちゃっかりしていなければならないと、ある本に書いてありました。 確かに、多くの女たちが、うっかり妊娠してちゃっかり結婚したり、 うっかり不倫をしても、ちゃっかりリセットして幸せになっています。 野田奈央子、32歳独身。 しっかりしている場合ではないのです。」
41、『We will Rock You』をBGMにカメラ目線で語り始める 奈央子。これはパターン化していくのかな? 奈央子は仕事中、真名美に相談事があると言われる。 「私はみんなの悩み相談室じゃないの。」と答える。 黒沢(赤西仁)から「アネゴ」と命名され迷惑そうな奈央子。 部長に歓迎会の幹事を頼まれ、いつもの所で良いかと尋ねると 「代わり映えしないな~。 もうちょっと、マシな所を頼むよ、アネゴ!」 「かしこまりまし・・・部長!その呼び方止めていただけますか?」 その呼び方が、社内のみんなに定着し始めたことに戸惑う。 奈央子は夕飯の買い物に魚を選んでいると、夜食の弁
42、当を買いにきた 黒沢に声をかけられる。 「なんか相談に乗って、晩飯作ってって、アネゴも大変ですね。」 と奈央子を気遣う黒沢。 部長たちの弁当を買いに来た黒沢に、どの弁当にするかアドバイスする 奈央子。上司の体調や好みまで把握しているのだ。 「そんなに気配り出来るのに、何で誰もアネゴと結婚しないんすかね? さっき真剣に魚選んでいる顔とか、可愛かったのに。」 (今カワイイとか言った?) (意外と家庭的なんだなぁ) 「おばさんからかっておもしろい? 10こも先輩のおばさんって、あんたからみたらただの物体でしょ?」 (どうせ女だと思っていないんでしょ) 「思ってませんよ。
43、 アネゴのこと物体だなんて思っていません。」 「じゃ、なに?あれか、あの、化石?」 「何でそうなんですか。」笑顔で言う黒沢。 (カワイイ・・・いかん 若さにクラっとするなんて、オバサンの証拠だ) 「はっ。馬鹿みたい!」自分に言った一言が (え?俺のこと? アホだと思われてんだ) 「黒沢君ならさ、若い子にいくらでもモテるでしょう?」 「あっ、あのアネゴって、恋人とかいるんですか?」 (イヤミか!) 「あのね、いたらね、後輩にご飯なんか作ってないわよ。」 「そうか。そうですよね。」笑顔の黒沢。 「ちょっと!そこ笑う所じゃないんだけど!」 (私は物体?女?) (
44、・・・・・・) (どっちなんだろう???) (・・・・・・) 「ん~、何どうしたの?」 「弁当遅いなと思って。」 「あぁ、そうだね。」 「まだですかね?」 「ちゃんと領収書貰うんだよ。じゃーね。」 「はいわかりました。 あ、あの!今度俺もアネゴの手料理、ご馳走になっていいですか?」 「なんで?」 (こいつ、絶対なんか裏がある) 「それは・・・」 (俺・・・XXXXXX・・・XXX) (ああっ、読めない! これが、オバサンの限界か!) お弁当屋の店員に声をかけられ、心の探りあい、修了。(笑) モヤのかかった文字を読もうと目を細める篠原さん。(笑) この
45、演出、面白い~! 奈央子は結局、真名美の相談を引き受けたんですね。 その夜。 真名美が連れてきたのは、秘書課の遠藤香苗(竹本聡子)。 「美人秘書にも悩みがあるんだね。」奈央子はこっそり真名美に言う。 食卓に並べられた沢山のご馳走。 「美味しい!これ本当に奈央子さんが作ったんですか?」 真名美、絶賛! だが香苗は箸を付ける事も無く、黙りこくっている。 「時間がもったいないから本題に入ろうか。えっと、男性問題?」 奈央子に言われ、香苗は頷く。 「相手は、田部井副社長(浅沼晋平)なんです。」 「えっ!?つまり、大不倫?」 相手の男があまりにも大物なことに奈央子の驚きは隠
46、せない。 3年間付き合ってきた。きっかけは、相手に強引に迫られたらしい。 「不倫を打ち明ける女は、なぜかみんな少しだけ自慢が入ってる。」 「それで?」奈央子が尋ねる。 「実は私、結婚することになったんです。 相手は医者で、私のことをすごく気に入ってくれて。 今年中にでも式をってことになったんです。」 香苗が結婚するときはカッコよく送り出す、と言っていた副社長。 香苗が結婚を報告すると、『絶対にお前を他の男に渡さない!』と 怒り出したらしい。 「そんなのきっぱり突っぱねればいいのよ。」と奈央子。 「・・・私が馬鹿だったんです。」と香苗が泣き出す。 「らぶらぶの時に、二
47、人で写真を撮ったらしいんですよ。 ちょっとエッチっぽいやつ。 これを、社内のネットで流すって。」 真名美は奈央子に一枚の写真を差し出す。 ホテルらしき場所のベッドの上から二人が笑顔でカメラに視線を 送る。その写真に驚きつつも、奈央子は言う。 「でもさ、自分の命取りになるようなことを、副社長がする訳 ないと思うよ。」 「でも・・・破れかぶれになっているんです。 どうせ社長にはなれないし、奥さんとの仲は最悪だし、 自分が失うものなんて何もないって。 現に、脅しじゃなくて、私のパソコンにも送られてきたんです。 こんなの、彼に見つかったら、彼は許してくれないわ。
48、 全て終わりです。」と言い又泣き出す。 「という訳で、奈央子さん、お願いします。」と真名美。 困惑する奈央子。 翌日。 会社に向かう奈央子に「アネゴ!おはようございます!」と声をかける 黒沢。 「昨日は弁当、ありがとうございました。 おかげでもう、大好評ですよ!」 「あ、そう。それはよかったね。」 「あれ?なんか元気ないですね。」 溜息をつく奈央子。 「あ!あと、昨日の相談事って何だったんですか?」 その時会社から、副社長と香苗が出てきた。 香苗も奈央子に気付き、そっと会釈を送る。奈央子も会釈を返す。 香苗は副社長が車に乗り込む間、もう一度奈央子の方に視線を
49、送り、 そして車に乗り込んだ。 「あの! ひょっとして、夕べの相談事って、美人秘書のことですか?」と黒沢。 「何言ってるの。違うわよ!」そう答え足早に歩き始める奈央子。 職場にて。 奈央子が席を外したのを見計らい、黒沢は隣に座る立花渡(山口馬木也) に質問する。 「副社長の美人秘書のことなんですけど。」 「お前、狙っているのか?あの子だけは絶対に止めとけ。」 「そうじゃなくって。 彼女、副社長にセクハラでもされてるんじゃないですかね?」 「ばーか。遠藤香苗はれっきとした愛人だよ。」 「そっか。・・・愛人ですか。愛人ですか?」 「出張にはいつも同伴しているし、
50、秘書課では公然の秘密だ。」 真名美や他の女性社員たちも、二人の会話を聞いていた。 「黒沢さん、そんなに愛人が珍しいんですか? この会社には、山ほどいるじゃないですか。ねぇ?」 早乙女加奈(山口紗弥加)が真名美に話を振る。 「うん・・・。」と真名美。 「バレてないと思うのは、本人たちだけ。 社内不倫ってたいがいそうですよね。 副社長って、すごいおじいちゃんなんでしょう!?」 「そう!」 「権力と寝るのが好きな女もいるってことだな。」 「え~~!?別に好きじゃなくてもボスと寝る女は いくらでもいますよ。 だって、男と女の関係になればどっかに飛ばされる心配もないし






